テレビ局の電波利用料については、たびたび「安すぎるのではないか」という議論が起こります。

テレビ局は、国民共有の公共資源である電波を使って放送事業を行っています。特に地上波テレビは、長年にわたり大きな影響力を持ち、広告収入を中心としたビジネスを展開してきました。

そのため、テレビ局が支払っている電波利用料が少ないと聞くと、「公共の電波を使っているのに、負担が軽すぎるのではないか」と感じる人もいるでしょう。

一方で、電波利用料は、電波そのものを市場価格で買うためのお金ではありません。
電波利用料は、電波監視、無線局管理、研究開発など、電波を適正に利用するための共益的な費用として位置づけられています。

つまり、テレビ局の電波利用料が高いのか安いのかを考えるには、単に金額だけを見るのではなく、制度の性格、通信会社との違い、放送の公共性、周波数の価値、放送免許との関係などを分けて整理する必要があります。

本記事では、テレビ局の電波利用料は本当に高いのか安いのかを、複数の判断軸から整理します。

目次 [ close ]
  1. テレビ局の電波利用料は高いのか安いのか
    1. 結論:金額だけで見れば安く見えやすい
    2. ただし、単純比較だけでは判断できない
    3. 判断軸を分けて考える必要がある
  2. そもそも電波利用料とは何か
    1. 電波を使う免許人などが負担する費用
    2. 電波利用料は「電波の販売価格」ではない
    3. 電波利用料と放送免許は別の論点
  3. テレビ局はいくら電波利用料を払っているのか
    1. NHKと民放キー局では負担額が異なる
    2. 携帯電話会社と比べると小さく見える
    3. ただし、放送と通信では電波の使い方が違う
  4. テレビ局の電波利用料が「安い」と言われる理由
    1. 公共の電波を使って事業をしているから
    2. 参入できる事業者が限られているから
    3. 売上や影響力に比べて負担が小さく見えるから
    4. 通信会社との負担差が目立つから
    5. 電波オークションが導入されていないから
  5. テレビ局の電波利用料を「単純に安い」と言い切れない理由
    1. 電波利用料は市場価格ではなく共益費用だから
    2. 通信会社とテレビ局では事業規模・設備投資が違うから
    3. 放送には災害報道や地域情報などの公共的役割があるから
    4. 地方局への影響も考える必要があるから
  6. テレビ局の電波利用料は何と比較すべきか
    1. 通信会社との比較
    2. 売上高との比較
    3. 公共資源の利用価値との比較
    4. 海外制度との比較
  7. テレビ局の電波利用料をめぐる本質的な論点
    1. 電波の公共性をどう評価するか
    2. 放送局の特別な地位をどう考えるか
    3. 負担増が視聴者や地域にどう影響するか
    4. 電波オークションで解決できる問題なのか
  8. テレビ局の電波利用料は今後どう議論されるべきか
    1. まずは負担額と使途の透明性を高める
    2. キー局と地方局を分けて考える
    3. 放送の公共性と市場原理をどう両立するか
  9. 電波利用料まとめ

テレビ局の電波利用料は高いのか安いのか

結論から言えば、テレビ局の電波利用料は、金額だけで見ると「安く見えやすい」といえます。

特に携帯電話会社と比較すると、その差は目立ちます。携帯電話会社は、全国に多数の基地局を設置し、スマートフォンやデータ通信サービスを提供しています。そのため、電波利用料の負担額も大きくなります。

一方、在京民放キー局の電波利用料は、各社数億円台と紹介されることがあります。NHKは全国的な放送網を持つため民放キー局よりも大きな負担額になりますが、大手通信会社と比べると、放送局全体の負担額は小さく見えます。

この比較だけを見ると、「テレビ局は公共の電波をかなり安く使っているのではないか」という印象が生まれます。

結論:金額だけで見れば安く見えやすい

テレビ局の電波利用料が安いと言われる最大の理由は、通信会社との負担額の差です。

大手携帯電話会社は、年間で100億円を超える規模の電波利用料を負担しているとされます。
一方、在京民放キー局は数億円台、NHKはそれより大きいものの、携帯電話会社と比べると差があります。

さらに、テレビ局は長年、地上波放送という強い影響力を持つメディアとして事業を行ってきました。広告収入を得ながら、限られた周波数を使って放送できる立場にあります。

この構造を見ると、負担が小さいと感じられるのは自然です。

特に、電波を「公共資源」と考える立場からは、テレビ局が支払っている電波利用料は低すぎるのではないか、という疑問が出やすくなります。

ただし、単純比較だけでは判断できない

一方で、テレビ局の電波利用料を、携帯電話会社の負担額と単純に比較するだけでは不十分です。

なぜなら、放送と通信では、電波の使い方が大きく違うからです。

携帯電話会社は、利用者一人ひとりと双方向通信を行います。
全国に多数の基地局を設置し、通信量の増加に対応するために継続的な設備投資を行っています。

一方、テレビ放送は、一方向に情報を届ける仕組みです。
放送局から広い範囲に番組を送信し、視聴者はそれを受信します。

同じ「電波利用」ではありますが、利用形態、設備構造、収益構造、社会的役割が異なります。

また、電波利用料は、売上に応じて単純に課される税金ではありません。電波の市場価格そのものでもありません。

したがって、「通信会社より負担額が小さいから安い」とだけ判断するのは、やや粗い見方です。

判断軸を分けて考える必要がある

テレビ局の電波利用料が高いか安いかを考えるには、複数の判断軸が必要です。

判断軸テレビ局の電波利用料の見え方
絶対額通信会社に比べると小さく見える
売上比率低い負担に見えやすい
公共資源の利用もっと負担すべきという見方が出る
放送の公共性単純な市場価格では測れない面がある
通信会社との比較事業構造が違うため単純比較は難しい
電波オークションの観点経済的価値を反映していないという批判につながる

このように、どの視点から見るかによって、テレビ局の電波利用料に対する評価は変わります。

金額だけを見れば安く見えます。
しかし、制度の性格まで考えると、単純に「安い」と断定するだけでは不十分です。

そもそも電波利用料とは何か

テレビ局の電波利用料を考える前に、そもそも電波利用料とは何かを確認しておく必要があります。

電波利用料とは、電波を利用する無線局の免許人などが負担する制度上の費用です。

テレビ局だけでなく、携帯電話会社、業務無線、簡易無線、その他の無線局も関係します。

電波は、無秩序に使うと混信や妨害が発生します。そのため、国は無線局を管理し、電波監視や周波数の有効利用に関する取り組みを行っています。

電波利用料は、こうした電波利用環境を維持するための費用です。

電波を使う免許人などが負担する費用

電波は、限りある公共資源です。
誰でも自由に好きな周波数を使えるわけではありません。

もし多くの無線局が同じ周波数を勝手に使えば、通信や放送が正常に行えなくなります。航空無線、消防無線、防災無線、携帯電話、テレビ放送などに支障が出れば、社会全体に影響が及びます。

そのため、電波を使うには原則として免許や登録が必要になります。
そして、電波を利用する免許人などが、電波利用料を負担します。

テレビ局も、放送用の電波を利用しているため、電波利用料を支払う立場にあります。

電波利用料は「電波の販売価格」ではない

重要なのは、電波利用料は「電波そのものの販売価格」ではないという点です。

電波利用料は、電波を市場価格で買うためのお金ではありません。
また、周波数を入札で取得する電波オークションの落札金とも違います。

電波利用料は、電波監視、無線局管理、研究開発、電波の安全性調査など、電波を適正に利用するための共益的な費用です。

この性格を理解しないまま、テレビ局の電波利用料だけを見ると、議論がずれやすくなります。

「テレビ局はもっと電波の市場価値に見合った負担をすべきだ」という考え方はあります。
しかし、その議論は、電波利用料制度の見直しや電波オークションの議論と関係します。

現行の電波利用料そのものは、電波の市場価格をそのまま反映する仕組みではありません。

電波利用料と放送免許は別の論点

テレビ局は、放送免許や認定を受けて放送事業を行っています。

ただし、放送免許と電波利用料は同じものではありません。

放送免許は、放送事業を行うための制度です。
電波利用料は、電波を利用する免許人などが負担する費用です。
電波オークションは、周波数を誰に割り当てるかを決める方法です。

この3つは、関連していますが別の制度です。

放送免許のあり方を議論すること。
電波利用料の負担額を議論すること。
電波オークションを導入するかどうかを議論すること。

これらは分けて考える必要があります。

テレビ局はいくら電波利用料を払っているのか

テレビ局の電波利用料は、局の種類や規模によって異なります。

NHK、在京民放キー局、準キー局、地方局では、放送網の規模や無線局の数が違うため、負担額も異なります。

一般に、NHKは全国的な放送網を持つため、民放キー局よりも負担額が大きくなります。在京民放キー局は数億円台、地方局はそれより小さい負担額として紹介されることが多いです。

NHKと民放キー局では負担額が異なる

NHKは全国に放送網を持っています。
そのため、電波利用料の負担額も大きくなります。

一方、在京民放キー局は、全国ネットワークの中心ではありますが、制度上の負担額は各社数億円台とされることが多いです。

さらに、地方局はキー局よりも規模が小さく、負担額も小さくなります。

つまり、「テレビ局」と一括りにしても、NHK、在京キー局、準キー局、地方局では状況が違います。

テレビ局の電波利用料を議論する場合、すべての放送局を同じように扱うと、実態を見誤る可能性があります。

携帯電話会社と比べると小さく見える

テレビ局の電波利用料が安いと言われるのは、携帯電話会社との比較が大きな理由です。

携帯電話会社は、全国に多数の基地局を設置しています。
利用者一人ひとりに通信サービスを提供し、通話、データ通信、動画視聴、アプリ利用など、膨大な通信量に対応しています。

そのため、電波利用料の負担額も大きくなります。

一方、テレビ局の負担額は、通信会社と比べると小さく見えます。

特に、テレビ局が公共の電波を使って広告収入を得ていることを考えると、「この負担額でよいのか」という疑問が出やすくなります。

ただし、放送と通信では電波の使い方が違う

ただし、放送と通信では電波の使い方が違います。

通信は、利用者一人ひとりとの双方向通信です。
携帯電話会社は、多くの基地局を設置し、通信エリアを維持し、通信品質を改善し続ける必要があります。

一方、放送は、番組を広い範囲に一方向で送る仕組みです。
同じ番組を多数の視聴者が同時に受信できます。

この違いを無視して、負担額だけを比較すると、誤解が生まれます。

通信会社の電波利用料が高いから、テレビ局も同じように高くすべきだ。
テレビ局の電波利用料が低いから、必ず不公平だ。

このように単純には言えません。

ただし、だからといってテレビ局の負担が十分だと断定できるわけでもありません。
重要なのは、比較の基準を明確にすることです。

テレビ局の電波利用料が「安い」と言われる理由

テレビ局の電波利用料が安いと言われる理由は、いくつかあります。

代表的なのは、公共の電波を使って事業をしていること、参入できる事業者が限られていること、売上や影響力に比べて負担が小さく見えること、通信会社との負担差が目立つこと、電波オークションが本格的に導入されてこなかったことです。

これらを順番に整理します。

公共の電波を使って事業をしているから

電波は公共性の高い資源です。

テレビ局は、その限られた電波を使って放送事業を行っています。
地上波テレビは長く大きな影響力を持ち、広告収入を中心に収益を得てきました。

そのため、国民共有の資源を使って事業をしている以上、もっと大きな負担をすべきではないかという見方があります。

この考え方は、感情的な批判だけではありません。

公共資源を利用して収益を得る事業者に、どの程度の負担を求めるべきかは、制度上も重要な論点です。

特に、地上波テレビは、視聴者に広く情報を届ける力を持っています。報道や世論形成にも影響します。

その社会的影響力を考えると、電波利用料の負担が小さすぎるのではないかという疑問が出るのは自然です。

参入できる事業者が限られているから

地上波テレビ放送は、誰でも自由に参入できる事業ではありません。

放送事業を行うには、制度上の要件を満たす必要があります。
また、利用できる周波数には限りがあるため、無制限に新規参入できるわけではありません。

この構造により、既存のテレビ局は特別な地位を持っているように見られます。

もちろん、テレビ局には報道、災害情報、地域情報、選挙報道などの公共的な役割もあります。単なる民間企業と同じように扱えない面もあります。

しかし、限られた事業者だけが地上波放送を行える構造である以上、その地位に見合った負担や説明責任が求められるという意見もあります。

ここから、電波利用料が安すぎるのではないかという批判が生まれます。

売上や影響力に比べて負担が小さく見えるから

テレビ局の電波利用料は、売上や影響力に比べて小さく見えることがあります。

在京民放キー局は、大きな放送関連収入を持っています。
広告収入や番組販売、関連事業などを通じて収益を得ています。

一方で、電波利用料の負担が売上に対して小さい比率に見えるため、「これだけの影響力と収益がありながら、負担が軽いのではないか」という印象につながります。

ただし、ここでも注意が必要です。

電波利用料は、売上に応じて課される税金ではありません。
そのため、売上比率だけで「高い」「安い」を決めることはできません。

しかし、公共資源を利用する事業である以上、売上や影響力とのバランスを見る視点は重要です。

通信会社との負担差が目立つから

通信会社との負担差も、テレビ局の電波利用料が安いと言われる大きな理由です。

携帯電話会社は、年間で大きな電波利用料を負担しています。
その負担は、最終的には通信料金やサービス価格に間接的に反映されている可能性もあります。

一方、テレビ局の電波利用料は、通信会社と比べると小さい。

この差だけを見ると、不公平に感じる人がいるのは当然です。

ただし、通信会社とテレビ局では、電波の使い方も事業構造も違います。
通信会社は多数の基地局を持ち、双方向通信を提供しています。テレビ局は放送波を使って一方向に情報を届けます。

したがって、単純に負担額だけを横並びにして公平・不公平を判断することはできません。

電波オークションが導入されていないから

テレビ局の電波利用料が安いと言われる背景には、電波オークションの議論もあります。

海外では、通信向け周波数を中心に、オークション方式で周波数を割り当てる例があります。
オークションでは、電波の経済的価値が価格に反映されやすくなります。

日本では長く、比較審査方式が中心でした。
そのため、「もしオークションで周波数の価値を決めれば、もっと高い負担になるのではないか」という見方があります。

この視点からは、現在の電波利用料は電波の市場価値を十分に反映していないように見えます。

ただし、電波利用料と電波オークションは別の制度です。

電波利用料は、電波利用共益費用としての性格を持つ制度です。
電波オークションは、周波数を誰に割り当てるかを決める方法です。

この違いを踏まえずに議論すると、制度理解が混乱します。

テレビ局の電波利用料を「単純に安い」と言い切れない理由

ここまで見ると、テレビ局の電波利用料は安いように見えます。

しかし、単純に「安すぎる」と断定するだけでは、制度の理解としては不十分です。

理由は、電波利用料の性格、通信会社との違い、放送の公共性、地方局への影響などを考える必要があるからです。

電波利用料は市場価格ではなく共益費用だから

電波利用料は、電波そのものを市場価格で買う費用ではありません。

電波利用料は、電波監視、無線局管理、研究開発、安全性調査など、電波を適正に利用するための共益的な費用です。

したがって、電波の市場価値と電波利用料を単純に比較することはできません。

たとえば、地上波テレビが使っている周波数には大きな社会的・経済的価値があると考えられます。
しかし、その価値をそのまま電波利用料に反映する仕組みにはなっていません。

この点が、批判の背景にもなっています。

つまり、「テレビ局の電波利用料は安い」と感じる理由の一部は、電波利用料に市場価格的な意味を期待しているからです。

しかし、現行制度上の電波利用料は、市場価格ではありません。

通信会社とテレビ局では事業規模・設備投資が違うから

通信会社とテレビ局では、事業構造が大きく異なります。

通信会社は、全国に多数の基地局を設置し、利用者ごとに双方向通信を提供します。通信量は年々増加しており、設備投資や保守費用も大きくなります。

一方、テレビ局は放送設備を使い、番組を広く一方向に送信します。
もちろん放送設備の維持や番組制作には大きな費用がかかりますが、通信会社とは設備構造が違います。

そのため、通信会社とテレビ局の電波利用料を単純に比較して、「通信会社がこれだけ払っているのだから、テレビ局も同じように払うべきだ」と考えるのは乱暴です。

比較する場合は、利用している周波数の性質、無線局数、サービス形態、設備投資、事業収入などを合わせて見る必要があります。

放送には災害報道や地域情報などの公共的役割があるから

テレビ放送には、公共的な役割があります。

ニュース、災害情報、選挙報道、地域情報、緊急情報などは、社会にとって重要です。
特に災害時には、テレビやラジオが重要な情報源になることがあります。

このため、放送を単なる商業サービスとして扱うことには慎重さが必要です。

もし電波利用料を大幅に引き上げ、放送局の経営を圧迫すれば、番組制作、地域報道、災害対応、設備更新などに影響が出る可能性もあります。

ただし、公共性があるから負担が軽くてよい、という意味ではありません。

公共性があるからこそ、透明性や説明責任も必要です。
テレビ局が公共の電波を使っている以上、その負担が妥当なのかは継続的に検証されるべきです。

地方局への影響も考える必要があるから

テレビ局の電波利用料を考える際には、地方局への影響も無視できません。

在京キー局と地方局では、経営体力が大きく異なります。
キー局は全国ネットワークの中心にあり、広告収入や関連事業の規模も大きい一方、地方局は人口減少や広告市場の縮小に直面しています。

もしテレビ局全体に対して一律に電波利用料を大きく引き上げれば、地方局の経営に影響が出る可能性があります。

地方局は、地域ニュースや災害情報を担っています。
地域の行政、学校、災害、交通、生活情報などを伝える役割もあります。

そのため、テレビ局の負担を議論する場合は、キー局と地方局を分けて考える必要があります。

「テレビ局は安すぎる」と一括りにすると、地域の情報環境への影響を見落とすおそれがあります。

テレビ局の電波利用料は何と比較すべきか

テレビ局の電波利用料が高いか安いかを考えるには、何と比較するかが重要です。

比較対象によって、見え方は大きく変わります。

通信会社との比較

最も分かりやすい比較対象は、携帯電話会社です。

通信会社は多額の電波利用料を負担しています。
そのため、テレビ局の負担額と比べると、テレビ局の電波利用料は小さく見えます。

ただし、通信会社とテレビ局では、電波の使い方が違います。

通信会社は、利用者ごとに双方向通信を提供し、多数の基地局を運用しています。
テレビ局は、一方向に広く情報を届ける放送を行っています。

したがって、通信会社との比較は分かりやすい一方で、単純比較には限界があります。

売上高との比較

次に、売上高との比較があります。

テレビ局の売上に対して、電波利用料がどの程度の割合かを見る方法です。
この比率が低い場合、「公共の電波を使っている割に負担が小さい」と感じられます。

特に在京キー局は、放送関連収入が大きいため、電波利用料の負担率は低く見えやすくなります。

ただし、電波利用料は売上課税ではありません。
売上に応じて自動的に決まるものではないため、売上比率はあくまで参考指標です。

公共資源の利用価値との比較

電波は、公共資源です。

地上波テレビが使っている周波数には、社会的価値も経済的価値もあります。
それを利用して事業を行っている以上、その価値に対して負担が見合っているのかという視点は重要です。

この視点から見ると、現在の電波利用料は、電波の価値を十分に反映していないのではないかという批判につながります。

そして、この議論は電波オークションとも関係します。

オークションであれば、周波数の経済的価値が価格に反映されやすくなるからです。

ただし、放送分野に市場価格の考え方をそのまま持ち込むことには、公共性や地域性の観点から慎重な議論が必要です。

海外制度との比較

海外制度との比較も一つの視点です。

国によって、放送免許料、周波数利用料、オークション収入、目的税など、制度設計は異なります。

そのため、日本のテレビ局の電波利用料だけを見て、単純に高い・安いと判断するのではなく、制度全体として比較する必要があります。

ただし、海外制度をそのまま日本に当てはめることはできません。

放送制度、地域局の役割、公共放送の位置づけ、広告市場、災害報道の重要性などが国によって違うからです。

海外比較は参考になりますが、日本の制度に合う形で考える必要があります。

テレビ局の電波利用料をめぐる本質的な論点

テレビ局の電波利用料をめぐる本質的な論点は、単に「金額が高いか安いか」ではありません。

重要なのは、電波の公共性、放送局の特別な地位、視聴者や地域への影響、電波オークションとの関係をどう考えるかです。

電波の公共性をどう評価するか

電波は国民共有の公共資源です。

そのため、電波を使って事業を行うテレビ局に、どの程度の負担を求めるべきかは重要な問題です。

公共の電波を使っている以上、一定の負担を求めるべきだという考え方があります。
一方で、放送には災害情報や報道などの公共的役割があるため、単純な市場価格だけで決めるべきではないという考え方もあります。

このバランスが、テレビ局の電波利用料を考えるうえで最も重要です。

放送局の特別な地位をどう考えるか

地上波テレビ局は、限られた周波数を使って放送を行っています。

誰でも自由に参入できるわけではありません。
このため、既存テレビ局は特別な地位を持っていると見られやすくなります。

この構造を既得権益と見る意見もあります。

一方で、放送局には公共的責任もあります。
単に利益を上げるだけでなく、災害時の情報提供、報道、地域情報の発信などの役割を担っています。

したがって、特別な地位に見合う負担と、公共的役割に見合う制度設計の両方が必要です。

負担増が視聴者や地域にどう影響するか

電波利用料を引き上げる場合、その影響も考える必要があります。

もし負担が大きくなれば、テレビ局の経営に影響が出る可能性があります。
制作費の削減、地域報道の縮小、設備投資の先送りなどにつながる可能性もあります。

特に地方局は、経営体力が限られている場合があります。

負担増によって地域情報や災害報道が弱くなるのであれば、視聴者にとって望ましい結果とは言えません。

一方で、負担を軽くしすぎれば、公共資源を利用する対価として不十分だという不信感が残ります。

このため、懲罰的に負担を増やすのではなく、制度目的に沿った設計が必要です。

電波オークションで解決できる問題なのか

テレビ局の電波利用料をめぐる議論は、電波オークションの議論ともつながります。

電波オークションは、周波数の割当過程を透明化し、電波の経済的価値を反映しやすくする制度です。

そのため、テレビ局の電波利用料が安いと考える人の中には、電波オークションを導入すべきだと考える人もいます。

ただし、放送分野に電波オークションをそのまま適用することには課題があります。

資金力のある事業者だけが有利になる可能性があります。
放送の多様性や地域性が損なわれる可能性もあります。
報道や災害情報といった公共的役割をどう守るかも問題になります。

したがって、電波利用料の見直しと電波オークション導入は、分けて考える必要があります。

テレビ局の電波利用料は今後どう議論されるべきか

テレビ局の電波利用料については、感情的に「安すぎる」と批判するだけではなく、制度全体を見ながら議論する必要があります。

重要なのは、負担額と使途の透明性を高めること、キー局と地方局を分けて考えること、放送の公共性と市場原理のバランスを取ることです。

まずは負担額と使途の透明性を高める

テレビ局がどれだけ電波利用料を負担しているのか。
その電波利用料が何に使われているのか。
制度として、どのような考え方で金額が決まっているのか。

これらを分かりやすく示すことが重要です。

情報が分かりにくいままだと、「テレビ局は安く公共の電波を使っている」という不信感が強くなります。

制度への信頼を高めるには、負担額、使途、算定方法の透明性が欠かせません。

キー局と地方局を分けて考える

テレビ局の電波利用料を議論する際には、キー局と地方局を分けて考えるべきです。

在京キー局は大きな事業規模を持っています。
一方、地方局は地域経済や人口減少の影響を受けやすく、経営体力も異なります。

すべてのテレビ局を一括りにして負担増を議論すると、地方局に過大な影響が出る可能性があります。

電波利用料の見直しを考える場合も、局の規模、地域性、公共的役割を踏まえた設計が必要です。

放送の公共性と市場原理をどう両立するか

電波の経済的価値を反映することは重要です。

公共の電波を使って事業を行う以上、一定の負担や説明責任は必要です。
一方で、放送には公共性があります。

市場原理だけで判断すれば、資金力のある事業者が有利になり、地域情報や報道の多様性が損なわれる可能性があります。

逆に、公共性を理由に過度に保護すれば、既存テレビ局の特別な地位が固定化されるおそれもあります。

重要なのは、公共性と市場原理のバランスです。

電波利用料は安いのか高いのか。
その問いに答えるには、金額だけでなく、制度目的、公共性、競争環境、視聴者への影響を総合的に見る必要があります。

電波利用料まとめ

テレビ局の電波利用料は、通信会社と比べると低く見えやすいです。

特に在京民放キー局の負担額は、大手携帯電話会社と比較すると小さく見えます。
また、売上や社会的影響力に対する比率で見ても、負担が軽いと感じられやすい面があります。

そのため、「テレビ局の電波利用料は安すぎるのではないか」という批判が出るのは自然です。

ただし、単純に「安い」と断定するだけでは不十分です。

電波利用料は、電波の市場価格ではなく、電波監視や無線局管理などに使われる共益的な費用です。
また、放送と通信では、事業構造、設備投資、電波の使い方、公共的役割が異なります。

テレビ局の電波利用料が高いか安いかは、絶対額、売上比率、通信会社との比較、公共資源としての価値、放送の公共性、地方局への影響など、複数の軸で考える必要があります。

重要なのは、感情的に高い・安いと断定することではありません。

テレビ局が公共の電波を使っている以上、負担額や使途の透明性は必要です。
一方で、放送が担う災害情報、地域情報、報道の役割も無視できません。

テレビ局の電波利用料をめぐる議論では、公共資源としての電波の価値と、放送の公共性をどう両立させるかが本質的な論点になります。

電波と報道 | テレビ報道はなぜこうなったのか―電波と放送免許から考える